「平和のための戦争論 集団的自衛権は何をもたらすのか?」を読みました。
平和のための戦争論: 集団的自衛権は何をもたらすのか? (ちくま新書)/筑摩書房
先日ご紹介した
防衛大学校で、戦争と安全保障をどう学んだか
の次に読む本としておススメである。
内容としては、安全保障学及び国際政治学の基本的な知識をおさらいした上で、これを現下の状況に当てはめていくというもの。
安全保障論の目的が「平和の維持」にあることを確認した上で、地に足の着いた論述が展開されている。
最後に著者の想定している日本が採り得る選択肢が列挙され、それぞれについてのメリット・デメリットが整理されているので、頭の中をクリアにすることができるだろう。
今後、日本がどのような選択肢を採用するにせよ、メリット・デメリットを知った上で判断しなければならない。
この本の中では、集団的自衛権の解禁に当たって必ず考えておかなければならない、いくつかの重要な問題が提起されている。
例えば、
日本は南シナ海の紛争に介入するのか
という点である。
南シナ海において中国が拡張的行動をとり続け、ベトナムやフィリピンとの軍事的衝突が起きた場合、当該国から派兵要請があるかもしれない。
日本が集団的自衛権を解禁したとの外交的メッセージは、東南アジア諸国に対して期待を抱かせるに十分であり、東南アジア諸国が今回の安保法案を歓迎するのは当然である。
さて、その場合、果たして日本は軍事介入するのかは非常に難しい問題だ。
海洋の安全航行を確保することは、日本にとっても重要な利益であり、日本の「存立に危機が生じる事態」となることはあり得る。
少なくとも、ホルムズ海峡における機雷掃海を想定している法案なら、南シナ海における船舶の安全航行確保も当然想定されなければならないであろう。
この場合、集団的自衛権の行使を解禁しておきながら派兵をしないという決断をすれば、アジアにおける日本への信頼は著しく毀損されることは間違いない。
一方で、日本が軍事介入した場合のリスクは言うまでもない。
間違いなく戦死者が出る。
そして、頼みのアメリカには、もはや全ての紛争に介入している余裕はなく、自国の国益にプラスがあるか否かで冷徹な判断をすると予想される。
南沙諸島のような直接の利害関係にない局地戦に軍事介入するとは思えない。
私は、尖閣紛争のような島嶼部における局地的な軍事衝突について、アメリカが軍事介入することはあり得ないと思っている。
疑問に思った方は、まず日米安保条約第5条を熟読していただきたい。
例えば、アメリカが軍事介入するには、国内における議会の承認を取り付ける必要があるが、アフガン戦争、イラク戦争で厭戦気分が蔓延しているアメリカにおいて、議会の承認が得られるとは思えない。
果たして、日本には(アメリカの関与がなくとも)東アジア地域での紛争に軍事介入する覚悟があるのであろうか。
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