おすすめ本「魏志倭人伝の謎を解く 三国志から見る邪馬台国」
魏志倭人伝の謎を解く - 三国志から見る邪馬台国 (中公新書)/中央公論新社
最近読んで面白かった本。
三国志好きにはわりとよく知られているとおり、「魏志倭人伝」という書物は存在しません。
陳寿の著した歴史書である「三国志」の「東夷伝・倭人の条」が便宜的に「魏志倭人伝」と呼ばれているわけです。
本書は、「三国志から見る邪馬台国」という副題からうかがわれるとおり、三国志の専門家が三国志の一部として執筆された「魏志倭人伝」を読み解くというものです。
いわゆる邪馬台国論争には、考古学的なアプローチと文献学的なアプローチがあり、後者の中心となっているのが「魏志倭人伝」です。
しかし、不思議なことに、これまで三国志の専門家による考証はほとんど行われてきませんでした(少なくとも私はお目にかかったことがありませんでした)。
そういった意味で、本書の提示したテーマは、邪馬台国論争に関する最も正統な文献学的アプローチによるものとして、今後十分に議論されていく必要があると考えます。
著者は、儒教的世界観の影響や、司馬懿の功績を宣揚する目的という史書編纂の背景を考慮しなければ真実は見えてこないと主張していますが、これは全くその通りでしょう。
私が今まで目にした邪馬台国関連本の中ではもっとも説得力を感じる本でした。
いわゆる畿内説と九州説のどちらが正当かという点についても見解を述べられていますが、ネタバレになるのでやめておきますね。
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