井上智洋「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」を読みました。
最近読んだ本。
人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊
です。
人工知能(AI)についてずっと興味を持っていましたが、ちゃんと勉強したことが無かったので、まず入り口としてこの本を読んでみました。
一言に「人工知能」と言っても、現在世界中で普及しつつあるAIは、「特化型人工知能」と言われるもので、プロ棋士に将棋で勝ったといって話題になっているのはこのタイプです。
これに対して、本書で主として取り上げられているのは、「汎用人工知能」と言われるもので、人間の行っている知的作業を一通り行うことができるロボットが想定されています。
著者によると、2030年頃から汎用AIが実用化される可能性が高いということです。
そうなると、社会にどのような変化が起こるのか。
第一次産業革命以来の経済構造の変動が起こる、ということです。
多くの職業が機械によって代替され、大部分の人々は職を失うことになります。
特化型AIであれば、当該分野の職業が機械によって代替されることになったとしても、労働移動が起こるので影響は限定的ですが、汎用AIが実用化されることになれば、あらゆる職業が機械によって代替されることになってしまいます。
われわれ弁護士も多くの点で変化を余儀なくされることでしょう。
ちなみに、弁護士秘書の仕事は90%以上が失われると予想されています。
もちろん、これまで弁護士がやっていた法律事務の中にも、AIに代替されるものが色々とあることでしょう。
著者は、低成長が続く現状打破の処方箋として、そして、汎用AIの実用化に伴う雇用崩壊に備えて、一刻も早く「ベーシック・インカム」を導入すべきと主張します。
たしかに、金融政策によって経済成長を継続させられる可能性があるとすれば、ベーシック・インカムのような「必ず隅々まで行き渡る方法」での現ナマ直撃弾しかないのかなとは思いました。
バラ撒きとの批判は不可避でしょうけど。。
某政権は企業が儲ければ必ずトリクルダウンが起きるんだと言い続け、挙句の果てには財界に対して「儲けを賃金に回せ」と要請する始末ですが、これは歴史的にはファシズムの手法なんですよね。
企業がいくら儲けたところでその分賃金が上がるわけではないというのは、マルクス経済学を少しかじっていればすぐに分かることで、賃金を利潤の「分配論」として考えている時点で、どうなのかなという気がします。
まあ、これは佐藤優氏の受け売りですけどね。
ベーシック・インカムについては、もう少し詳しく勉強してみたいと思います。