第16回判例勉強会②~人傷社による自賠責保険からの回収と損益相殺
(①に続いて)
二つ目の判例は、
東京地裁平成21年12月22日。
(やや専門的な話になります)
人身傷害補償保険というのは、簡単に言うと、被害者の過失に関係なくケガの程度に応じた一定額の保険金が支払われるという損害保険です。
最高裁は、人身傷害補償保険に基づいて保険金を支払った保険会社(人傷社)による相手方への代位範囲について、いわゆる裁判基準差額説に立っています。
本事例で問題となったのは、人傷社が被害者に対し人身傷害補償保険に基づいて保険金を支払った後、自賠責保険金を回収した場合に、被害者から加害者に対する損害賠償請求において、当該自賠責保険金を損益相殺することができるかという問題です。
本判例は、自賠責保険金の損益相殺を認めず、被害者保護の立場を明確にしたものといえ、結論的には妥当なものと評価できますが、加害者側の保険会社からすると、あらためて人傷社に対して不当利得返還(?)請求をする手間が増えますので、たまったものではないかもしれませんね。
かといって、損益相殺を認めた上で、被害者に自賠責保険金分を回収させる負担を課すのも妥当ではありませんので、上記の結論は仕方ないでしょう。
根本的な問題点は、人傷社が自賠責保険金を回収することができるシステムになっているところにあると思います。
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