岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

昭和史読書録

歳のせいか(もしかしたら昔からかもしれないが)、読んだ本の内容をすぐに忘れてしまう(もしかしたら最初から覚えていないだけかもしれない)。

下手をするとその本を読んだことすら忘れてしまっている場合がある。

ということで、ここ2~3ヶ月の間に読んだ昭和史関連書の一部を備忘録として残しておく。

寸評を付け加えたので、これから昭和史関連の本を読もうと思っている方には読書ガイドとして利用していただければ幸いである。


昭和史の決定的瞬間


主に昭和11~12年ころの政治状況を扱っている。
著者の坂野潤治先生は個人的に信頼している歴史学者の一人。
いわゆる「ポイント・オブ・ノーリターン」の問題を考える上では必読書。
著者が何をもって「決定的瞬間」といっているのかについては、読んでからのお楽しみ。


昭和史の逆説 

とても読み易い。
読んで字のごとく、一般的な昭和史のイメージからすると「逆説」的な事実関係を明らかにしている。
国際連盟脱退に至る経緯などはとても面白い。
「日本が国際連盟を脱退したことで、外交上の緊張がいったん緩和することになった」と聞いてエッ?っと思った人はどうぞ。


昭和史講義:最新研究で見る戦争への道

色々な学者による短めの学術論文の詰め合わせのような本。
執筆者によって記述にバラつきはあるものの、類書であまり触れられていない論点に触れられているところはとても良い。


大人のための昭和史入門

座談会と、複数の執筆者による論考集の詰め合わせ。
記述にバラつきはあるものの、内容は「昭和史講義」より良い意味で学術性が低く、一般向け。
昭和戦前期の中国における群雄割拠を現代のIS(イスラム国)に例えている論考などは目からウロコ。


昭和天皇実録」の謎を解く

昭和天皇実録」を対談形式で読み解いていく本。
立憲君主制の下における「天皇」という存在について考えさせられる。


21世紀の戦争論 昭和史から考える

佐藤優氏による独特の視点はいつも参考になる。
本書も一般的な昭和史関連本とは一線を画す内容。


昭和戦前期の政党政治-二大政党制はなぜ挫折したのか

内容はかなり学術論文寄り。
単純な事実経過の羅列は読んでいて辛いが、真実は細部に宿るということか。
戦前期日本において良い線まで行っていた政党政治が挫折し、破滅的な戦争へと突き進んで行った理由は、単に軍部の所為でもなければ、一部の狂信的な者たちだけの所為でもないということがよく分かる。
憲法改正論議が盛んになっている昨今ではあるが、結局のところ、どのような憲法であったとしても、(国民を含め)それを運用する者の見識の問題の方がより重要であると感じた。


昭和史裁判

最近文庫化された。
昭和史に影響を与えた人物の功罪を対談形式で論じている。
取り上げられているのは、広田弘毅近衛文麿松岡洋右木戸幸一昭和天皇の5名だが、あえて一つだけ印象に残った章を挙げるとすれば、木戸幸一の章。
本書を読んで木戸に対するイメージがかなり変わった。
対談形式なので読み易いかと思いきや、知識レベルはかなり高度な部分もある。
下手に近づくと火傷するかも。


総点検・日本海軍と昭和史

元海軍将官であった小柳冨次が、戦後、水交社からの依頼で元海軍将官たちからの聴き取りを行った際に作成された冊子(通称「小柳資料」)についての対談本。
有名な「海軍反省会」は中堅将校たちの証言が中心だが、小柳資料は将官レベルにあった人たちの証言を集めたものとなっている。
証言者は、吉田善吾、嶋田繁太郎、高橋三吉、堀悌吉、岡敬純、栗田健男、草鹿龍之介、福留繁、石川信吾、富岡定俊など、海軍大臣軍令部総長連合艦隊司令長官の経験者や海軍の中枢にいた人たちを含む超豪華メンバー。
聴取者も気心の知れた元海軍将官であったためか、証言者から率直な言葉を引き出すことに成功しており、非常に興味深い。
元の資料はあまり出回っていないので、こちらをどうぞ。


海軍と日本

名著。
著者は元海軍将校で、海軍の政治への関わりを語る上では必読書と考える。


日本海軍と政治

海軍の政治責任に関する最近の学問的成果を一般向けに書き下ろしたもの。
戦前期における海軍の対応については、政治的に残念な部分も多々あるが、海軍には海軍の立場があったのだということが良く分かる。
色々な立場からモノを見るということは、歴史を勉強する上で非常に大事だ。


海軍将校たちの太平洋戦争

日本海軍と政治」と同じ著者によるもの。
相互補完的な内容になっている(と思う)。




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