岡田暁生「クラシック音楽とは何か」読了。
たまには音楽の本でも読んでみようかと思い。
もともと著者のファンということで手に取りましたが、
ショパンはリチャードクレイダーマン とか
イタリア・オペラは演歌 とか
そうそう、そうなんだよな!
と膝を打つような箇所が続出します。
「うんざいするほど長い音楽」(例えば、ワーグナーのオペラ)を楽しむコツは「あまり集中しないこと」だそうです笑
オペラハウスの常連客は、長~いワーグナーのオペラの上演中ひたすら寝続けていて、聴きどころが近づいたらパッと目を覚まし、聴きどころが終わったら次の聴きどころが来るまですやすや寝ている、これぞ「ワーグナーの正しい聴き方」だそうな。
でも、これは真理だと思う。
ワーグナーのオペラなど、実際のところ大部分は誰が聴いても退屈だと思うんですよね。
でも、一部分が本当に素晴らしいので、みんな魅了されてしまうわけです。
また、よくその関連性を指摘されているところではありますが、世界史(政治史)と音楽史との交錯について触れている点もGood。
モーツァルトはフランス革命前の人、ベートーヴェンはフランス革命後の人、というのは考えてみれば当たり前なのですが、音楽史を繙くうえで非常に重要なポイントと思います。
この本を読めば、バロックから古典派、ロマン派に至る大きな音楽史の流れが、政治史との絡みを踏まえてガっと鷲掴みに出来ること請け合いです。
著者は、偉大な作曲家として、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンを特に評価しているようです。
バッハとベートーヴェンについては異論ありませんが、音楽史的に言うと、個人的にはモーツァルトの評価が少し高すぎ、ハイドンの評価が少し低すぎなのでは、と思います。
(もちろん、モーツァルトの音楽の偉大性については、寸分の異論もありません)
音楽史においてとりわけ重要な意味を持つ「交響曲」や「ソナタ形式」が飛躍的な発展を遂げたのは、ハイドンの労作なくしてあり得なかったと思うからです。
実際、スコアを研究してみればすぐに分かることですが、ハイドンに比べ、モーツァルトの交響曲は実に単純な構成のものが多い。
モーツァルトはどちらかというと、交響曲よりもピアノ協奏曲やオペラに止めを刺すと思います。
(例えば、「フィガロの結婚」第2幕のアンサンブル・フィナーレなどは、音楽史上最高のものの一つだと思います)
本書はどちらかというとクラシック音楽に全く触れたことがない初級者よりも、ある程度クラシック音楽に親しんでいる中~上級者(例えば、バッハのマタイ受難曲と言われてすぐにイメージが湧くレベルの方)の方が面白く読めるのではないでしょうか。
結論としては、めちゃくちゃオススメです。
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