旧民法による相続
旧民法の親族法・相続法のお勉強。
弁護士として業務を行っていく中で、たま~にお目にかかるのが旧民法による相続。
戦後、民法の親族・相続に関する規定は大改正されていますが、旧民法時代に発生した相続には旧民法が適用されます。
しかし、旧民法に関する文献は、実際のところ余り出版されていないのが実情。
今は存在しない法律なので仕方ないのですが。。。
旧法下で複雑な相続関係が生じている場合などは、相続関係を判定するだけで一苦労です。
いつもの調子で漫然と相続関係を整理していると、大ケガをする危険があります。
そんなときには、この一冊。
「旧法親族相続戸籍の基礎知識」
旧民法の相続と現行民法の相続とでは、大きく異なる点がいくつかあります。
まずは、家督相続制度の有無。
旧民法と現行民法との差異が生じる理由を突き詰めていくと、家督相続制度を前提としているかどうかにだいたい行き着きます。
旧法下での相続は、家督相続と財産相続の二本立てになっていたのですね。
戸主に属する財産は、家督相続発生時に家督相続人が包括的に承継します。
また、家督相続の場合、戸主の「隠居」により発生する場合もあります(現行民法における相続発生原因は「死亡」のみ)。
また、財産相続の場合の相続順位も、現在とは全く異なっており、旧法下では、
第1順位 直系卑属
第2順位 配偶者
第3順位 直系尊属
第4順位 戸主
となっています。
注目すべき点は、
・配偶者は第2順位の財産相続人(現行民法では常に相続)
・兄弟姉妹に相続権がない
・最終的に戸主が相続
といった点です。
最終的に戸主が相続することになっているため、相続人不在の財産があまり生じません。
現行民法では、相続人不在の財産がどんどん発生していきますので、これが大きな社会問題ともなっていますよね。
このようにして相続人不在状態を防止する法制度は、注目に値します。
実に合理的です。
もう一つ注意点を付け加えるならば、法定血族関係には「養親子」だけでなく「継親子」と「嫡母庶子」があることです。
継親子関係というのは、簡単に言うと、継親と継子との間に当然に親子関係が発生するというもの(現行法では養子縁組が必要)。
また、嫡母庶子関係というのは、父親が認知した非嫡出子(庶子)と父親の配偶者との間に当然に親子関係が発生するというもの(こちらも現行法では養子縁組が必要)。
同業者の皆さん、気を付けましょうね~。
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