【超オススメ】本郷和人著「承久の乱」読了。
ここ数カ月間の内に読んだ中でもトップクラスに面白かった本をご紹介します。
数多くの一般向け著作も執筆し、現代のスター歴史家の一人といってよい本郷先生ですが、専門は鎌倉時代ということで、満を持して執筆した本のようです(本人曰く、構想20年とのこと)。
「鎌倉武士の権力を巡る闘争の結果としての承久の乱」がテーマとなっており、権力闘争の結果勝ち残った北条義時はなぜ後鳥羽上皇(朝廷)に圧勝したのか、が解き明かされていく内容となっています。
このテーマを論じるに当たって、鎌倉幕府の成り立ちに遡って平易に解説されており、この時代のことをあまりよく知らなかった私みたいな人間にとっては最高の入門書でした。
ところで、再来年の大河ドラマは、三谷幸喜脚本で「鎌倉殿の13人」だそうです。
「13人」というのは、歴史好きの方であればご承知のとおり、頼朝亡き後の合議体に加わっていた御家人の数。
ちょうどこの時期の政治情勢を一般向けに解説したこの本は、最高の副読本の一冊になると思います。
この本のおかげで、再来年の大河ドラマが俄然楽しみになってきました。
渋いけど、とてもいいテーマだと思います。
葉室麟著「無双の花」読了。
引き続き読書録。
葉室麟さんの「無双の花」です。
こちらの小説も主人公は立花宗茂。
「無双」というのは、立花宗茂が秀吉から「天下無双」と称えられたというエピソードがもとになっています。
ストーリーは、関ヶ原の後、西軍の敗残兵(宗茂自身は負けてはいないのですが)として柳川に帰ってきたところから始まります。
その後、柳川に返り咲くまでが中心に描かれており、関ヶ原以前については回想のような形式で触れられます。
童門冬二さんの「小説 立花宗茂」がライトノベル寄りなのに比べると、こちらはいわゆる「歴史小説」といってよいと思います。
立花宗茂には色々と有名なエピソードがあるのですが、作家によって表現が違うのがまた面白いところですね。
例えば(以下、ネタバレ)、私が好きなエピソードの一つに、
家臣が乞食に出かける時には、宗茂が留守番をしていた。ある日家臣が残飯を干飯にするために日に干して出かけた所、その日突然雨が降ってきた。家臣たちは宗茂がちゃんと残飯を雨に濡れないように屋内に取り込んでくれたかどうかと語り合い、「そんな些細な事に気をかけるような殿では、再仕官などおぼつかないだろう」という結論になった。案の定帰宅すると、宗茂は残飯を放置して雨に濡れるままにしていた。(Wikipediaより抜粋)
というものがあります。
関ヶ原の後、改易されて浪人中のエピソードで、宗茂を慕って付き従ってきた家臣が食うや食わずでなんとか主君を支えていた時代の話なのですが。
この作品では、「実は宗茂は気づいていたけど、家臣の期待を裏切らないためにあえて放置した」ということになっています。
私としては、本当に気にしていないという方が好みなんですけどね。
また、不仲といわれた誾千代(妻)との関係性は、童門作品よりさらに美しく描かれており、大河ドラマにするとしたら、誾千代との関係性については葉室作品を原作にして欲しいですね。
何度も言うけど、早く大河ドラマになって欲しいなあ。
童門冬二著「小説 立花宗茂」読了。
引き続きGW中の読書録。
今や世の中の歴史ファンの中で「大河ドラマの主人公にしたい戦国武将No1」の座にあると言っても過言でない立花宗茂。
特にここ十年くらいの人気の急激な高まりを感じます(少なくとも15年前は「信長の野望」プレイヤーしか知らなかったと思う笑)。
NHKもついに「英雄たちの選択」で取り上げましたしね(大河化への布石か?)。
正面から取り上げられた小説は意外と少ないのですが、この作品はその中の一冊です。
500ページを超える長編ですが、ライトノベルのような軽快な筆致で、サラサラっと通読できます。
あらためて読んでみても、これほど大河ドラマ向きの武将なんて他にいないんじゃないですかね。
大河ドラマのために創作された架空の人物なんじゃないかっていうほど、大河ドラマに必要な全ての要素を兼ね備えています。
人物像がとても魅力的。
誾千代(ぎんちよ)という「尖った」奥さんもいる。
波瀾万丈の人生。
適度に美化されてもいるし、もうこれが大河の原作でいいんじゃない?(笑)
実は2020年の大河化が有力視されていたようなのですが、ふたを開けてみたら明智光秀。しかし、今年の大河は災難続きですから、・・・(自粛)。
さあ、この記事を読んだそこのあなた、みんなで立花宗茂の大河ドラマ化を応援しましょう!(笑)
福岡伸一「生物と無生物のあいだ」読了。
GW中の読書録。
福岡伸一先生の「生物と無生物のあいだ」です。
ひょんなことから読み始めた(コロナ騒動がきっかけではない)のですが、大変に面白かったです。
DNAの二重らせん構造の発見に至る経緯や、いわゆる「動的平衡」状態の発見に至る経緯が物語風に語られています。
表現は時として文学的で、著者はとても文章が上手い。
また、著者による研究の回想が随所に挟まれており、理系の研究の現場がどのようなものか、私のような文系人間にとっては新鮮でした。
アメリカのポスドクが置かれた状況についても興味深かったです。
ただ、本のタイトル「生物と無生物のあいだ」は、内容に合っているような合っていないような。
少なくとも私自身が読む前にタイトルから受けていた印象とは全く異なる本でした。
もし未読の方がおられたら、読んでみられることをオススメします。