橋爪大三郎×大澤真幸「げんきな日本論」を読みました。
本日ご紹介するのは、最近読んだ本の中では頭一つ抜けて面白かった本です。
とにかく目からウロコの連続で、新書にしては分厚めの400頁超という本ですが、一気に読んでしまいました。
個人的には、なぜ日本語には漢字・平仮名・片仮名という三種類の文字があるのか、日本人がどのように文字を使い分けてきたのか、という問題についての論考が面白かったです。
また、源氏および平氏の中の重層的な「イエ」と「イエ」との相互関係がヤクザに例えられたり、信長がやろうとしていたこと(とりわけ天皇との関係)がマッカーサーに例えられたりしているあたりは、とても面白くて分かり易い例えだなと思いました。
さらに、全体を通して、時の政権のレジティマシー(正統性)について多く筆が割かれており、勉強になります。
古代の天皇制から始まって、摂関政治、院政、武家政権に至るまで、その時々の政権がどのようにレジティマシーを確立しようとしてきたかという問題ですが、これはなぜ天皇という存在が生き残ってきたのかという問題とも関連してきます。
昨今、天皇の譲位や皇位継承に関して色々な議論がなされていますが、本書は、日本の歴史における天皇の存在とはどのようなものなのか、天皇の権威の源泉は何なのかといった問題を考えていく上で非常に参考になるものと思います。
もちろん、ご両名は専門の歴史家ではないので、細かいことを言えば、前提となっている歴史的事実に異論や誤認がある箇所もあろうかとは思いますが、それを論(あげつら)って鬼の首を取ったように批判するのは、木を見て森を見ない議論と言えましょう。
とにかく歴史に興味のある方であれば一読の価値ありです。
(なお、本の題名になっている「げんきな日本論」の意図するところはよく分かりませんでした)