ラトル&ベルリン・フィルのシベリウス交響曲全集
数ヶ月前に注文した
が到着しました~!
今回も素晴らしい出来です。
(ただし、2番シンフォニーのフィナーレなどをよく聴くと、ブラスのアンサンブルの乱れなどがあって、あれっ?と思ったりします。チェリビダッケだったら激おこプンプン間違いなし。)
恥ずかしながら、シベリウスのシンフォニーをしっかり勉強したことがないので、あまりエラそうなことは言えませんが、雑感としてエラそうなことを少々。
これまで、シベリウスの名演と言えば、いわゆる北欧系指揮者(例えば、ベルグルンドやサラステなど)と北欧系オーケストラによる、情感たっぷりの演奏が取り上げられることが多かったように思います。
かのヘルベルト・フォン・カラヤンは、「シベリウスを演奏するためには、フィンランドの自然を知らなければならない」と言ったそうですが(ちなみに、ライナーノーツによると、作曲者自身はカラヤン&フィルハーモニア管の演奏を気に入っていたそうです)、シベリウスのシンフォニーは独特の世界観を持っています。
残念ながらフィンランドには行ったことがないのですが、たしかに名演と言われている録音を聴くと、例外なく、フィンランドの冷たい風、人里離れた森や湖などの美しい自然を想像できる気がします(あくまでも主観的な印象)。
世界観の独自性という意味では、ブルックナーに似たようなものを感じるのですが、これらの作曲家によるシンフォニーには、外してはならないキモのようなもの、すなわち、それを外してしまうと世界観が一気に壊れてしまうような繊細な部分があるような気がしています。
シベリウスの名演と言われている演奏は、例外なくその「キモ」を押さえているものですが、今回のラトル&ベルリン・フィルの全集は、それらの名演と同じく「キモ」をしっかりと押さえつつ、さらに精緻にスコアを再現しており、よりスタンダードな完成度の高い名演と言えるのではないでしょうか。
また、良い意味で抑制的であるところに好感が持てます。
例えば、一番ポピュラーな第2番、特にフィナーレは、ともすると派手に演奏されがちな部分ですが(例えば、バーンスタイン&ウィーン・フィルの演奏と比較してみて下さい)、しっかりとテンポや音量がコントロールされており、「シベリウスらしさ」を毀損することがありません。
作曲者がカラヤン&フィルハーモニア管の演奏を好んだ理由は「やり過ぎていない」というものだったらしいので、「抑制的」であるということは、作曲者が望んだポイントの一つと言って差し支えないでしょう。
ラトルはシベリウスにかなりの思い入れがあるらしく、全集もバーミンガム市響とのものに続いて二度目。
以前、ベルグルンドのアシスタントを務めていたこともあるらしく、伝統的なシベリウスの名演の系譜をしっかりと引き継いでいるように感じられます。
ところで、シベリウス好きの方であれば、この作曲家の真骨頂は、ポピュラーな2番などではなく、5番、6番、7番にあると言われるのではないでしょうか。
3番&4番もシベリウスらしさ全開で素晴らしい(と思う)のですが、いかにもシブ過ぎて万人に受け入れられる曲とは思えません。言うなればマニア向けです。
かく言う私も、シベリウスの好きな曲を問われれば、シンフォニーの5番&6番と答えると思います。
(とは言え、2番シンフォニーの終楽章のフィナーレ、トランペットとトロンボーンがユニゾンで賛歌を奏でるところは、何度聞いてもトリハダですよね。)
これから冬を迎えるに当たって、目を閉じながら何度も繰り返し味わいたい名盤です。