池上彰・佐藤優共著「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」を読みました。
大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)/文藝春秋
新刊書を早速読んでみた。
池上彰・佐藤優の共著による「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」。
池上氏×佐藤氏のペアは、すでに数冊(単行本化されたものはたぶん2冊)の共著を出版しており、いずれも拝読したが、両者はなかなか相性が良いようだ。
佐藤氏による元外交官らしい、かつ教養溢れる深い洞察に、池上氏が持ち前の「痒い処に手が届く」ような分かり易い解説を加えていくスタイル。
お二人は、現代社会の情勢を理解し今後の展望を拓くためには、基礎的な教養が重要であることを色々な所で強調されているが、この本においても「リベラル・アーツ」の重要性は強調されている。
中でも、現代の「リベラル・アーツ」として、世界史は必修科目である(当ブログでも繰り返し述べてきたとおりだ)。
世界史についてある程度詳しくなると、あらゆる分野についての教養が、あたかもシナプスが繋がっていくように連繋してくるのを実感できる。
ほんの一例を紹介すると、私が現在興味を持っている資本主義の問題についても、資本主義の成立過程について理解するためには、少なくとも、資本の原始的蓄積段階としての大航海時代(重商主義や植民地貿易の時代)、賃金労働者が生まれてくる過程としてのエンクロージャーといった歴史的経緯を知っておかなければならないだろう。
また、19世紀中ごろの社会情勢について知らなければ、マルクスの思想について共感的な理解を得ることは難しいと思う。
もちろん、私が専門としている法学(厳密には法律実務に過ぎないのだが…)に関しても、例えば憲法のことをしっかりと勉強しようと思えば、近代立憲主義の成立過程について知っていなければならないし、これを知らないと、近代法の思想的背景や資本主義との関連も理解できないに違いない。
さらに当たり前のことであるが、世界史は宗教や芸術とも深く関係している(これについては機会があればまた触れることにしよう)。
以上のとおり、世界史「を」学ぶことの重要性をいくら強調してもし過ぎることは無いわけであるが、この本を読んで「なるほど」と感じさせられたのは、世界史「を」学ぶだけでなく、世界史「に」学ぶことにより、「論理的・理性的にはよく分からない事象」について、経験的に理解したり推測したりすることが可能になるという点である。
この世の中はあまりに複雑すぎて、論理的・理性的・合理的に理解することには限界があると言わざるを得ない。
しかしながら、世界史に学ぶことで経験的な知恵を得ることができれば、新たな展望が拓けるかも知れないということである。
なお、この本の中では、ウクライナ情勢やイスラム国などに関する最新の情勢についても触れられており、とても勉強になる。
最後に、お二人の共著による他の2冊もご紹介しておく。
新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)/文藝春秋
希望の資本論 ― 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか/朝日新聞出版
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