ドイツ帝国
最近売れているみたいなので、
エマニュエル・トッドの日本向け近著、
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告
を読みました。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)/文藝春秋
本書に通底するテーマは、一言で言うと
帝国化するドイツとヨーロッパの危機
です。
著者がドイツ嫌いのフランス人だからなのか、インタビュー形式だからなのか分かりませんが、結構過激なことが書いてあります。
著者も「穏健な考えを過激に表現する」性向があることを自ら認めていますが。
本書を読めば、ヨーロッパがどのような状況にあるのか、ある程度具体的なイメージを掴むことができると思います。
例えば、現在のギリシャ危機については、結果的に予言のような内容になっている部分もあり(本書に収録されているインタビューは2011年から2014年までのもの)、各国がどのような思惑を持って行動しているのかということについて、日本の報道を見ているだけでは得られない視座を作ってくれるでしょう。
日本では、一般的に
勤勉なドイツ=善
怠惰なギリシャ=悪
といった図式が定着しているように思われますが、一概にそのように割り切ることはできないということが分かります。
著者の主張から見えてくるのは、ドイツがユーロの実質的支配によって多大な利益を莫大な得ている一方、各国の実情に合わない財政規律の押し付けが行われることにより、ドイツとユーロ諸国との間に深刻な対立が生まれているという図式。
「ドイツ悪玉論」とでも言うべきものが、ヨーロッパではそれなりに正当性のあるものとして受け入れられているのだと感じました。
もちろん二度の世界大戦の要因になったという歴史的経緯もその背景にはあります。
著者の持論からすると、ギリシャはデフォルトすべきである、ユーロ諸国は加盟国にデフォルトの自由を与えるべきである、ユーロは加盟国に脱退の自由を認めるべきであるということになりそうではあります。
本記事の執筆時点では、ドイツはギリシャの救済になお慎重な姿勢を示しています。
もっとも、著者の分析によると、ドイツが最終的にギリシャのデフォルトを等閑視することはあり得ない(慎重な態度はより良い条件を引き出すための駆け引きに過ぎない)ということになるのでしょう。
ただし、ドイツの金融資本家たちが、ギリシャのデフォルトによる影響は軽微であると読み切っている場合には、ギリシャのデフォルト、そしてユーロ離脱を容認することもあり得るのかもしれません。
さて、今回のギリシャ危機、結果はどのようになるでしょうか。
また、ところどころ日本について直接言及した部分があるほか、フランスで起きている事象に関する分析がそのまま日本にも通ずると思われるようなところもあります。
とても参考になります。
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