岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

税務争訟研修に行ってきました。

昨日の夜は、弁護士会館で開催された税務「争訟」の研修に参加してきました。

なお、「訴訟」じゃなくて「争訟」となっているのは、課税処分に対して不服を申し立てる場合、法律上、いきなり裁判をすることはできず、「異議申立て」と「審査請求」という前段階があるためです。

ところで、弁護士は「基本的人権の擁護」に努めなければならないと弁護士法上義務付けられておりますが、「基本的人権」というのは、そもそも「対国家権力」の場面で、強大な国家権力に対峙するため憲法上保障された権利なわけです(つまり「対国家権力」でない場面で「人権」あるいは「人権侵害」という用語を使用するのは間違いだと思います。)。

「対国家権力」の代表的な場面としては、まず刑事手続があります。

裁判所によって犯罪を犯したと断定された場合、刑務所に収容されたりするわけですが、これはまさに「人権」が大幅に制限されている場面ということになります。
のみならず、裁判所によって犯罪を犯したと断定されたわけでもないのに、逮捕されちゃったりするわけで(もちろん裁判所が令状を発付していることが前提ですが)、これも「人権」が大幅に制限されている場面になります。

そして、「対国家権力」のもう一つの代表的な場面が、課税手続というものです。

(誤解を恐れずに言えば)課税庁は、国民から(もちろん法律にしたがって)財産を取り上げることができる絶大な権限を与えられている機関といえます。しかも、警察が容疑者を逮捕する場合と違って、裁判所による事前審査はありません。もっと言えば、そうであるにもかかわらず、極めて広範な裁量権を与えられてさえいるのです。

憲法上、課税処分は法律に従ってなされなければならないという原則(租税法律主義)が定められいるのですが、法律自体にもあいまいな点が多く、税務署が広範な裁量を与えている(多くの場面において税務署の解釈によって課税するかどうかの判断が可能な状況となっている)ため、租税法律主義は形骸化しているといっても過言ではありません。

これまで、多くの弁護士は刑事手続において被告人の人権を守るための活動(いわゆる刑事弁護)を熱心に行ってきたといえますが、それに比べて、課税処分について納税者の人権を守るための活動を熱心に行ってきた弁護士は非常に少ないと思われます。

租税法律主義が形骸化しているのは、税務訴訟に熱心に取り組む「口うるさい弁護士」が少なかったことにも原因があるのではないかと感じているところです。すなわち、事前審査がなされていない課税処分の誤りを正すには、最終的には裁判所へ取消を求める訴訟をするしかないのに、そういった訴訟を取り扱っている弁護士が少なかったという状況が続いてきたわけです(最近になって増えてきたとはいえ、まだまだ足りないというのが現状だと思われます)。

そんなわけで、弁護士はもっともっと税務訴訟に関心を持っていかなければならない、個人的にも税務訴訟には今後ますます積極的に取り組んでいかなければいけないと考えています。

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