木村正人著「EU崩壊」を読みました。
今本屋に行くと、この本が目立つところに置いてあります(丸善調べ)。
ギリシャのデフォルト、フランスのテロ、Brexitなどで最近話題になることが多く、社会の注目を集めているのでしょう。
しばらく前に購入して積読状態になっていましたが、ようやく通読。
EU崩壊 (新潮新書)/新潮社
3年前に出版された本ですのでその点には留意が必要ですが、EUで起こっている様々な問題の基本的な構造は変わりません。
EUでおおよそどのような問題が起こっているのかということの概略は分かります。
私見を述べさせていただければ、結局、EUで今起こっていることは、簡単に言うと、設計主義的なグローバリズムに対するナショナリズムの反動なのであり、避けられないものであったということです。
もともと、多数の国が同じルールで民主的にまとまっていくには、各国の利害を超えた同胞意識(いわば「欧州人としてのナショナリズム」)が不可欠であろうと思いますが、今のところそこまでは至っておらず、各国のナショナリズムが勝っていると見ることができると思います。
よく言われるように、民主主義とナショナリズムとは一体のものですから、ナショナリズムの存在しないところに民主的なルールは根付かないということです。
例えば、中東などでは、今でも国家への帰属意識よりも部族への帰属意識の方が強いと言われており(もともと、西欧が勝手に国境線を引いているという経緯もありますが)、国家レベルのナショナリズムというものがありませんので、あのような状況になっているわけです。
アメリカなどが期待していた民主化のドミノなど起こらなかったことは、歴史が証明していますね。
それでも、加盟国間の経済格差がそれほど大きくなければ、問題が事実上顕在化しない可能性もありますが、EU加盟国間の経済格差が大きな問題となっていることはご案内のとおり。
キリスト教という宗教の共通性でまとまるしかないという論調も見られますが、キリスト教といってもプロテスタント国とカトリック国とでは感覚が違うでしょうし、どうなんでしょう。
一国家のナショナリズムを超えて、多数の国の結合を目指そうとした先人たちの努力には惜しみない敬意を表したいと思いますが、今のところ八方ふさがりの状況にあるというのがヨーロッパの現状ではないでしょうか。
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