岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

坂野潤治「日本近代史」を読みました。

日本近代史 (ちくま新書)/筑摩書房



先日の記事で、各分野ごとに自分の家庭教師を決めるのが良いという話をしました。

私にとって、日本近代史についての家庭教師は、坂野潤治先生です。

本日ご紹介する一冊は、坂野史学による日本近代史の通史ダイジェスト版。

ダイジェスト版とは言っても、かなりのボリュームがあります。

が、読みにくさを感じることがほとんどないので、割と簡単に通読できると思います。


歴史に学ぶことの重要さについては、当ブログで何度も言及しているところですが、日本近代史こそ、日本人に限らず、世界中の人々にとって示唆的であると言えましょう。

何しろ「完全なる後進国だった極東の小国が急激な発展を遂げ、世界三大海軍国に成り上がった後、破滅寸前まで追い込まれた歴史」なのですから。


この本では、日本近代史を

改革の時代 1857-1863
革命の時代 1863-1871
建設の時代 1871-1880
運用の時代 1880-1893
再編の時代 1894-1924
危機の時代 1925-1937

に区分するというのが特色になっています。

私個人としては、明治維新直後の時代、国としての骨格が徐々に出来上がっていく時代(「建設」」の時代)に特に興味を持っているのですが、この部分についての坂野先生の分析は秀逸です。

簡単に内容をご紹介しますと、明治維新の共通スローガンであった「富国強兵」及び「公議輿論」は、維新後、それぞれの主張に従って分派し、ゴムの綱引きのような状況(「柔構造」と表現されます)になっていったと分析されています。

つまり、明治維新の共通スローガンであった「富国強兵」「公議輿論」は、維新後、
「富国」は大久保利通を中心とする「殖産興業」派へ
「強兵」は西郷隆盛を中心とする「外征」派へ
「公議」は木戸孝允を中心とする「憲法制定」派へ
輿論」は板垣退助を中心とする「議会設立」派へ
分派しつつ、かつ柔軟な綱引きの中で明治日本が形成されていった、というのが坂野先生のご主張です(と思います)。

私は、坂野先生のご著書を拝読するまで、これほど明快な日本近代史の分析に触れたことがなかったので、正に「目からウロコ」の状態となりました。

日本近代史について基本的な視座を作るための入門書としてこれ以上のものはないだろうと、あえて断言したいと思います。



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