堀田江理著「1941 決意なき開戦」を読みました。
堀田江理さんの「1941 決意なき開戦」。
著者はアメリカ育ちの日本人。
アメリカ人に対して「日本人から見た日米開戦」を説明するために執筆したものだそうだ。
そもそも、この本自体が、欧米において英語でまず出版されたものを著者自身が日本語へ翻訳したものとのことである。
基本的な論調については、ある人から見れば「反日的」に見えるかもしれないし、またある人から見れば「反省不足」という風に見えるかもしれない。
全体的な印象としては「よく書けている」と思った。
当時の空気感は「だいたいこんな感じだったのではないか」と納得させられる。
また、プレイヤーの生い立ちなど、メインの歴史叙述とは直接関係のない付随的なエピソードや、永井荷風の日記、戦時下の一般市民の生活状況などに関する記述も良かった。
ただ、色々な文献を参照して書かれてはいるものの、あまり学術的な本ではないのかなという印象である(執筆の目的からして当然かもしれない)。
記述の元になっている史料についてどのような検討を加えているかは分からないので、どこまでが固い事実で、どこからが著者の意見なのかが読んでいても分からない。
とは言え、それがかえって記述の流れの良さを生み出しており、結果的にとても良い本になったのではないかと思う。
歴史ドキュメントとして読むのが良い。
この本の副題には「現代日本の起源」と書かれているが、開戦に至る経緯を見ると、とにかく既視感がもの凄い。
日米開戦に至る意思決定過程が「起源」と言えるかどうかはともかく、戦後も同じ失敗が何度も繰り返されているとしか思えない。
エスタブリッシュメントたちの当事者意識と責任感の欠如は、現代においても世界中でホットなトピックとなっている。