岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

波多野澄雄著「幕僚たちの真珠湾」を読みました。

連休中の読書記録(その2)。

 

波多野澄雄氏による「幕僚たちの真珠湾」。

 

幕僚たちの真珠湾 (読みなおす日本史)

幕僚たちの真珠湾 (読みなおす日本史)

 

 

本の題名からすると、一見、「海軍幕僚から見た真珠湾作戦」について書いている本のように見えるが、大違い。

 

陸海軍の幕僚による開戦決定に至るプロセスへの関与について論じた本である。

 

そもそも「真珠湾」について書いている本ではないので、題名は完全にミスリードと言わざるを得ない。

 

 

この本を読むと、当時の国策決定において陸海軍幕僚の意向がいかに強く影響していたかが分かる。

 

開戦決定に至る様々な組織的思惑の交錯はただでさえ理解が困難であるが、この本は、国家意思決定のプロセスにおいて、各プレイヤーがどのような利害の下に行動していたのかを理解するうえで非常に有益であった。

 

例えば、昭和16年9月6日の御前会議で決定された有名な「帝国国策遂行要領」の作成に際し、「開戦決意」を明記するかどうかについて、陸軍は積極的、海軍は消極的だったわけだが、これには、「開戦決意」をしてから戦争準備に時間を要する陸軍と、比較的短期間で戦争準備が可能な海軍との差があったということだ。

 

(陸軍の場合、大量の将兵を動員し、戦地へ移動させなければならないので、決意の無いまま戦争準備をすることは事実上不可能)

 

こういった事情を知らないと、なぜ陸軍があれほど「開戦決意」の明記にこだわったのかを理解することはできない(単なる精神主義的な強硬論ではない)。

 

この辺りの記述は、旧陸海軍将校に囲まれて戦史を編纂していた経験を持つ著者の面目躍如といったところであろう。

 

「開戦決意」の顛末は、最終的に「開戦を辞せざる決意」という曖昧な表現に落ち着いたわけであるが、このような官僚的な「言葉遊び」は現代の政治においてもよく見られるものである。

 

また、上記の事例からもうかがわれるとおり、(多くの)エリート陸海軍幕僚たちの思考は、よく言われているような精神主義的なものでは無い。

 

実際にはその真逆であり、一面においては極めて合理的・実利的な思惑の下に行動していたことが分かる。

 

最終的に組織的利害の考慮を出なかったことは問題ではあるが、これはいかなる官僚機構においても当てはまる特性のように思われる。

 

すなわち、結果的に組織的利害が行動指針となってしまうというのは、官僚の職責からして避けられない問題であると思った方が良いのかもしれず、むしろ国家システムをいかに構築するかといった観点から検討すべき問題であろう。

 

 

前回ご紹介した森山優氏の「日本はなぜ開戦に踏み切ったか」と併読することで、戦前史の理解がさらに深まるものと思う。

 

 

 

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