おすすめ本「日本酒テイスティング」
数か月前、ワインの入門書(ワイン一年生)をご紹介しましたので、今回は日本酒の入門書をご紹介。
日本酒テイスティング (日経プレミアシリーズ)/日本経済新聞出版社
日本酒の入門書についても、世の中には多数出回っていますが、中々「これ」といったものには出会いません。
多くの書籍は、日本酒の醸造過程を説明し、精米歩合などの基本的な説明を経て、日本全国のご当地銘柄の説明へと移ってしまうのが通常です。
これまでの入門書では、なんとなく日本酒の基礎知識を身に着けることはできても、結局はそのお酒を飲んでみなければ、どのようなお酒なのか予想できないという難点がありました。
この本は、手っ取り早く自分の飲みたい味かどうかの当たりを付けようという観点から、日本酒の「産地」と「タイプ」を見ることで、ある程度どのような味なのかを大胆に予測してしまおうというものです。
著者はワインのソムリエなので、随所にワインとの比較が見られるのですが、様々な要因により、日本酒はワインよりもブラインドテイスティングが難しく、また、ラベルから味を予測するのも難しいとのこと。
しかしながら、本書はこの難問に対して果敢に一定の回答を与えようとするものです。
まず、産地に関しては、日本全体をAエリアからFエリアまでに分類しています。
A…東北
B…北陸
C…関東甲信越
D…中部
E…中四国
F…九州
そして、Bエリアを起点にして日本列島を右回りにぐるっと回っていく(B→A→C→D→E→F)につれ、エレガントなタイプからパワフルなタイプに変化していく、というのが著者の整理です。
たしかに、私の数少ない日本酒知識に照らし合わせてみると、北陸のお酒にはピュアで淡麗なものが多いという印象がありますし、九州のお酒にはパンチがあって複雑な味わいのお酒が多いという印象があります。
一方、タイプについては、醸造アルコールの有無、精米歩合の高低によって分類されています。
こちらの分類については、日本酒の入門書であれば大抵書いてあるとおり。
醸造アルコールの有無に関しては、
純米系(醸造アルコール無添加)…純米大吟醸、純米吟醸、特別純米、純米
本醸造系(醸造アルコール添加)…大吟醸、吟醸、特別本醸造、本醸造
精米歩合の高低に関しては、
精米歩合の低い「吟醸」系…純米大吟醸、大吟醸、純米吟醸、吟醸
精米歩合の高い「非吟醸」系…特別純米、特別本醸造、純米、本醸造
という分類になります。
一般論としては、本醸造系の方が、純米系よりも香りも味わいもスッキリと仕上がり、吟醸系の方が非吟醸系よりもエレガント、とされています。
こちらの分類についても、経験に照らして納得できるものです。
このように「産地×タイプ」の組み合わせから、当該日本酒の味や風味を大雑把に予想してしまおうという本なのです。
当たり前のことしか言っていないようにも思われますが、それはコロンブスの卵というものでしょう。
ここまで明快に日本酒の味わいをタイプ分けしている本は、これまであまり見たことがありませんでしたので、目からウロコです。
もう1点、ワインソムリエならではの視点から酒米を分析されていましたので、少しご紹介。
この本の中で補足的に酒米について触れらているのですが、生産量トップ3は、
第1位 山田錦
第2位 五百万石
第3位 美山錦
だそうです。
赤ワインの原料となる三大ブドウと言えば、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、メルローですが、著者は、男性的でパワフルな山田錦をカベルネ・ソーヴィニヨンに、女性的で繊細な五百万石をピノ・ノワールに、突出がなく飲みやすい美山錦をメルローに例えています。
ワイン好きの方には、とても分かり易い例えではないでしょうか。
日本酒のことをもっとよく知りたいけど、何となく捉えどころがないと感じている方にオススメの一冊です。
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