岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

理論判例、場合判例、事例判例

珍しく法律実務ネタ。

「ランチブログ」と呼ばれて久しい当ブログですが、ブログ村に参加している他の弁護士さんの法律ネタの多さには頭が下がります。

普段から法律の事しか頭にないのかと勘ぐってしまうほど。

見習って、たまには弁護士らしい記事もアップしないとね。


NBL1077号(最新号)に判例の分類に関する興味深い指摘を見つけました。

なお、対談における門口正人元名古屋高裁長官の発言です。


皆さんは、理論判例、場合判例、事例判例という区分をご存知ですか?

法律実務家であれば、判例の射程を検討する際に、何となく意識していることだとは思いますが、判例に記載されている内容のうち、先例として価値のある部分(レイシオ・デシデンダイ)はどこかということに関連する問題です。

判例がニュースで取り上げられる際、その判示が「傍論」なのかどうかが問題となることがありますよね。

傍論というのは、「先例価値のない部分」といった程度の意味です。


簡単に言うと、理論判例と場合判例の場合には、規範的な部分に判例価値がある一方、事例判例の場合には規範ではなく、そこに示された事情等に意味があるということ。

で、どこを見ればこれらを分類できるのかというと、端的に公式判例集に記載された判示事項、判決要旨を見るだけで分かる、というのが本日のテーマであります。


まず、理論判例(一般判例)の場合には、判示事項に法規の見出しのような記載が掲げられている。

例として、判示事項「文書提出命令に対して抗告の利益を有する者の範囲」(最判平成12年12月14日)が挙げられていました。


次に、場合判例については、判示事項に「…の場合」と掲げられている。

例として、判示事項「同一当事者間で締結された二個以上の契約のうち一の契約の債務不履行を理由に他の契約を解除することのできる場合」(最判平成8年11月12日)が挙げられていました。


そして、事例判例については、判示事項に「…とされた事例」と掲げられている。

これについては、特に例を挙げるまでも無いかと思います。


当たり前ですが、理論判例よりも場合判例、場合判例よりも事例判例の方が判例の射程が狭まることが理解できると思います。

判例の射程自体は普段から意識していることですが、判例集の記載と判例の分類との連関について明快に説明されているものはあまり見たことがありません(私が不勉強なだけかもしれません)。

事例判例かそうでないかについては分かり易いのですが、理論判例と場合判例の区別についてはあまり意識していませんでしたので、今後判例集を読み解く際、短時間で判例の射程を把握するのに役立つと思います。


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