岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

源田實著「真珠湾作戦回顧録」を読みました。

真珠湾作戦回顧録 (文春文庫)/文藝春秋


ちょっと前、源田實氏による「真珠湾作戦回顧録」を読みました。

源田實という方は、軍事史、戦史に興味のある人にとってはちょっとした有名人。

太平洋戦争の開戦劈頭、日本海軍が、アメリカ太平洋艦隊の基地があったハワイ真珠湾を奇襲したことは、「リメンバー・パールハーバー」というプロパガンダ用語と共によく知られた事実ですが、源田参謀はその真珠湾作戦を中心になって計画した人物です。

当時、最新鋭兵器であった飛行機を重点使用する航空作戦に精通した参謀というのは極めて数が限られていたため、空母機動部隊の運用に関しては、航空畑であった源田参謀の意見がそのまま採用されることが多かったようです。

このような状態を指して、当時世界最強を誇った日本空母機動部隊が「源田艦隊」などと揶揄されていたのは有名な話。


本の中身の話に入りますが、やはり戦前の高等教育を受けた人の文章というのは読みやすいですね。

まあ、源田氏については毀誉褒貶といいますか、色んなことを言う人がいますが、知的エリートであることは間違いないと思います。

真珠湾作戦」という当時としては極めて常識外れの難易度の高い作戦を実施するに当たり、作戦の計画当事者が、山積する難問を、絡まった糸を一つずつ解していくように解決していく様には一種の爽快感さえ覚えます。

真珠湾作戦の実施に当たっては、
①航路選択の問題
②洋上補給の問題
③浅海面雷撃に関する技術的問題
④水平爆撃に関する技術的問題
など、いずれも劣らず困難な問題が山積していました。

本書を手に取る前も断片的な知識は持っていましたが、さすがに計画当事者の述べることには説得力があります。

真珠湾作戦」が山本五十六の発案による奇想天外な作戦であったということについてはよく知られたことですが、これがいかに常軌を逸するものであったかということについても、実感を持って理解することができました。

しかし、これらの難問は、源田参謀を中心とする幕僚や現場指揮官の努力によって一つずつ解決されていき、最終的には「人事を尽くして天命を待つ」という状況で作戦の実施に至ります。


ところで、このような作戦計画上の問題解決は、弁護士業務における事件の方針決定の局面でも同じようなところがあるように感じます。

受任当初は困難に思われた事件について、少ない脳みそをフル稼働させ、問題を一つ一つ解決していくうちに、わずかな光明を見出したときの感覚。

特に、原告多数の困難な弁護団事件の中心として活動していると、自分の意見が弁護団の意見として採用され、事件の帰趨に影響を与える局面というのが出てきます。

国家の存亡を背負った源田参謀とは比較にならないかもしれませんが、そのような局面では少なからずプレッシャーを感じるものです。


本書は現在絶版となっているようですが、経済的合理性を度外視して出版し続ける価値のある書物と言ってよいのではないでしょうか。


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