第20回判例勉強会「責任無能力者の不法行為と監督者の責任~名古屋地裁平成25年8月9日判決」②
1ヶ月以上前、第20回判例勉強会の記事を書いたのですが、長いこと続きを書くことができずにいました(汗)
(おさらい)
事案の概要は、「鉄道会社である原告が、高齢かつ認知症患者である男性Bが正当な理由なく線路に立ち入り、通過した列車と同人が衝突したことにより列車が遅延するなどして損害を被ったとして、同人の相続人らに対し、監督義務違反が認められる又は事実上の監督者に該当するとして民法709条ないし714条に基づき損害賠償等を請求するとともに、B本人の損害賠償債務を相続したとして損害賠償等を請求した」というものです。
登場人物は、次の7名です。
①本人
要介護4の認定を受けており、家人が気づかない間に外出して行方不明になることもあるという状態でした。本件事故は、自宅で妻と二人でいるとき、妻が目を離したすきに家を出て、線路内に立ち入ってしまったために起こった事故でした。
②妻
要介護1の認定を受けており、左右下肢に麻痺拘縮があったほか、ひどい物忘れがときどきある状態でした。本件事故は、妻が目を離したすきに起こってしまったものでした。
③二女
幼いときに他家へ養子に出ており、本人と月1回程度の交流はあったようですが、本人の介護には関与していませんでした。
④長男の妻
本人の妻(義母)、長男(夫)、三女(義妹)との家族会議により、自らも困難な病気をかかえていながら、本人の住居の近くに引っ越し、毎日本人のところへ通って介護をするという役割を負っていました。「長男の嫁だから」という考え方が根底にあったようです。
⑤長男
本人の介護についての家族会議を主導し、長男として「家族代表」のような立場にありました。本件事故当時は、1ヶ月に3回程度、週末に本人宅を訪問し、毎日介護をしている妻から本人の状況について頻繁に報告を受けていました。
⑥三女
結婚し実家を出た後も、実家から車で10分程度の場所に住み、折に触れて実家に出入りしていました(本件事故当時は、月2回程度)。介護福祉士の資格を持っていました。
⑦二男
家族会議には参加しておらず、本件事故当時は国外にいました。
さて、このような事情のもと、鉄道会社が相続人に対して監督責任を問うことが可能か、というのがこの裁判例のテーマです。
皆様は、どのように思われますか。
以上の相続人の中で、誰かが責任を負うべきでしょうか、それとも、誰も責任を負わなくてよいと思われますか。
次回、裁判所の判断とそれに対する私の意見を書きたいと思います。
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