一坂太郎著「司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰、龍馬、晋作の実像」を読みました。
司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰・龍馬・晋作の実像 (集英社新書)
- 作者: 一坂太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/09/13
- メディア: 新書
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一坂太郎さんの「司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰、龍馬、晋作の実像」を読んだ。
日本人の歴史観に大きな影響を与えた作家、司馬遼太郎。
日本人の思い描く歴史は、司馬遼太郎の小説によって創られたと言っても過言ではない。
しかし、司馬遼太郎の小説はあくまでフィクションである。
この本は多くの読者がそれをわきまえずに読んでいることについて警鐘を鳴らしている。
もっと言えば、(多くの政治家やそれを支持する国民が司馬遼太郎を読んでいて、そのことによりある種のヒロイズムに陥る危険性があることを踏まえた)弱者の存在を無視した英雄待望論的なものへの批判である。
もっとも、これには司馬遼太郎があたかも史料的根拠があるかのようにして「物語」を随所に挿入していることにも理由があるのだが。
この本は、一言で言えば、坂本龍馬や高杉晋作の英雄史観に「冷や水をぶっかける」ものである。
盲目的に坂本龍馬や高杉晋作を英雄視している方々にとっては少なからずショッキングな内容かもしれない。
以前テレビ番組で、ある芸能人?(誰だったかは覚えていない)が、坂本龍馬を尊敬していると公言する人間は信用できないという発言をしていたが、私も同じような感覚を持つことがある。
それは、坂本龍馬や高杉晋作を尊敬していると公言する多くの人が、司馬遼太郎の作り話をそのまま信じ込んでいて、実質的には「架空の人物」を尊敬していると公言しているに等しいから。
「架空の人物」を尊敬していると公言して憚らない人間に胡散臭さを感じるから。
一つ断っておくが、私は司馬遼太郎の作品が好きである。
これほど読者を作品に引き込む巧みな話術を持っている歴史小説家は空前絶後であろう。
しかし、ときには「分かりやすさの裏に犠牲になっているものがあるのではないか」という疑いの目を持つことも必要なのではないか。
そのことを再認識させてくれる本であった。
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