岡弁(岡山県倉敷市の弁護士)ブログ

岡山県倉敷市で法律事務所を経営する弁護士(若手→中堅)が日々の雑感をつぶやきます。紛らわしいですが岡山弁護士会の公式ブログではありませんのでご了解ください(笑)

第18回判例勉強会(破産法53条1項に基づく解除と違約金条項)②

次に取り上げられた判例は、東京地裁平成21年1月16日判決。

事例は、賃借人破産の場合において、破産管財人が破産法53条1項に基づいて賃貸借契約を解除した上、賃貸人に対して敷金返還請求をしたところ、違約金請求権との相殺が主張されたというものです。

この事案では、

① 賃貸人は賃借人に破産手続開始その他倒産手続の申立があったときは何らの催告なしに契約を解除できる
② ①の理由により契約が解除された場合、賃借人は違約金として賃料の6か月分相当額を賃貸人に支払う

との特約がなされていました。

しかし、上記東京地裁判決は、次のとおり述べて、違約金請求権との相殺を否定する判断をしました。

「…被告は、平成19年9月18日、本件契約書21条1項3号に基づき本件契約を解除する旨の意思表示をしたのであるが、同契約条項は、平成16年法律第76号により当時の民法621条が削除された趣旨(賃借人の破産は、賃貸借契約の終了事由とならないものとすべきこと)及び破産法53条1項により破産管財人に未履行双務契約の履行・解除の選択権が与えられている趣旨に反するものとして無効というべきであるから、同契約条項に基づく上記解除もまた無効というべきである。
…本件契約書20条3項は、賃借人が賃料・共益費6か月分を支払うことにより本件契約を解除し得るとする趣旨であると解され、他の事由による本件契約の終了時にも賃借人が違約金を支払うべきことを規定したものであるとは解することができない。そうすると、…本件契約は、X管財人と被告との間で合意解除されたもの又はX管財人が破産法53条1項に基づき解除したものであるから、いずれにしても本件契約書20条3項が適用される場合に該当しないことは明らかであり、原告が被告に対し同条項に定める賃料・共益費6か月分の支払義務を負うべき理由はない。」

この判例を前提とすると、せっかく賃借人が破産した場合に備えて契約書に解除条項を入れておいても無効になってしまうわけですから、賃貸人には酷ですね。
違約金条項の効力を正面から判断した方が良かったんじゃないでしょうか。

(③へ続く)

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