勢古浩爾「それでも読書はやめられない」を読みました。
去る筋から「今月は1回しかブログを更新していないではないか。誠に怪しからん!」というお叱りをいただいてしまいましたので、今月の内に慌てて更新します・・・
前々からご紹介しようと思っていた本のご紹介です。読み終えてから少し時間が経っていますが、面白かったので。
勢古浩爾さんの
それでも読書はやめられない 本読みの極意は「守・破・離」にあり
です。
いわゆる「読書論」と言われるジャンルの本で、この本ほど共感した本はいままでありません。
世の中には掃いて捨てるほど「読書家」と言われる人たちがいて、その人たちが書いた読書論的なものは割と好きで読むことがあるのですが、たいていの「読書家」が書いていることは、とてもマネできないものばかり。
読書家たちの読書論では、通常、一般市民には到底読了困難な質量の「名著」が多数紹介され、あたかもこれを読むのは人として当たり前であるかのようなスタンスのものばかりです。
できもしないことを勧められても、それを読まないと人生損している!みたいは心理的圧迫を受けるので、それ自体がストレスに感じるというのは共感できます。
それに引き換え、著者はいわゆる「名著」なんて無理して読まなくていいと断言し、自分が面白いと思うものを好きなように読めばいいというスタンスで、とても好感が持てます。
そうは言っても、著者は世の中で「名著」と言われているものについても色々と読んでおられ、その経験を踏まえてのこの意見なので、最初から何も読まずに言っているのとは違うかもしれませんが・・・。
この本の中で触れられている「読書家たちの読書論」読書論はとても痛快なので、是非一読をおすすめします。
ちなみに、私は著者の影響で北方謙三の「三国志」を読み始めました。
読みたいと思った本をすべて読み切るのは無理そうだということが分かり、人生の残り時間で何を読むのか真剣に考え始めた今日この頃です。
オススメ漫画「風太郎不戦日記」
今月に入ってから一度もブログを更新していないというクレームがありました。
コロナ明けで色々と動き始めているためか、このところなんとなくバタバタとしています。
最近読んだ中で面白かったマンガがこれ。
「風太郎不戦日記」です。
原作は山田風太郎の「戦中派不戦日記」。
昭和20年(戦時中)における医学生の日常が描かれています。
例えば・・・
毎晩のように空襲警報が鳴るので、すっかり感覚がマヒしていて、警報が鳴ってもどうせ来ないだろうと高を括っていること。
期末試験を憂鬱に思いながら、空襲が来ると無試験で合格とみなすというルールだったらしく、むしろ空襲が来てくれないだろうかと望んでしまう心境。
3月10日の東京大空襲の後には医学生として「冷静にアメリカ人を一人でも多く殺す研究をしよう」と決意したこと。
このような状況の中でも、映画を見たり、歌舞伎を見たり。
全く想像を絶する状況ですが、戦時下の学生のリアルが感じられました。
続刊が楽しみです。
早速、原作も購入しました。
【超オススメ】本郷和人著「承久の乱」読了。
ここ数カ月間の内に読んだ中でもトップクラスに面白かった本をご紹介します。
数多くの一般向け著作も執筆し、現代のスター歴史家の一人といってよい本郷先生ですが、専門は鎌倉時代ということで、満を持して執筆した本のようです(本人曰く、構想20年とのこと)。
「鎌倉武士の権力を巡る闘争の結果としての承久の乱」がテーマとなっており、権力闘争の結果勝ち残った北条義時はなぜ後鳥羽上皇(朝廷)に圧勝したのか、が解き明かされていく内容となっています。
このテーマを論じるに当たって、鎌倉幕府の成り立ちに遡って平易に解説されており、この時代のことをあまりよく知らなかった私みたいな人間にとっては最高の入門書でした。
ところで、再来年の大河ドラマは、三谷幸喜脚本で「鎌倉殿の13人」だそうです。
「13人」というのは、歴史好きの方であればご承知のとおり、頼朝亡き後の合議体に加わっていた御家人の数。
ちょうどこの時期の政治情勢を一般向けに解説したこの本は、最高の副読本の一冊になると思います。
この本のおかげで、再来年の大河ドラマが俄然楽しみになってきました。
渋いけど、とてもいいテーマだと思います。
葉室麟著「無双の花」読了。
引き続き読書録。
葉室麟さんの「無双の花」です。
こちらの小説も主人公は立花宗茂。
「無双」というのは、立花宗茂が秀吉から「天下無双」と称えられたというエピソードがもとになっています。
ストーリーは、関ヶ原の後、西軍の敗残兵(宗茂自身は負けてはいないのですが)として柳川に帰ってきたところから始まります。
その後、柳川に返り咲くまでが中心に描かれており、関ヶ原以前については回想のような形式で触れられます。
童門冬二さんの「小説 立花宗茂」がライトノベル寄りなのに比べると、こちらはいわゆる「歴史小説」といってよいと思います。
立花宗茂には色々と有名なエピソードがあるのですが、作家によって表現が違うのがまた面白いところですね。
例えば(以下、ネタバレ)、私が好きなエピソードの一つに、
家臣が乞食に出かける時には、宗茂が留守番をしていた。ある日家臣が残飯を干飯にするために日に干して出かけた所、その日突然雨が降ってきた。家臣たちは宗茂がちゃんと残飯を雨に濡れないように屋内に取り込んでくれたかどうかと語り合い、「そんな些細な事に気をかけるような殿では、再仕官などおぼつかないだろう」という結論になった。案の定帰宅すると、宗茂は残飯を放置して雨に濡れるままにしていた。(Wikipediaより抜粋)
というものがあります。
関ヶ原の後、改易されて浪人中のエピソードで、宗茂を慕って付き従ってきた家臣が食うや食わずでなんとか主君を支えていた時代の話なのですが。
この作品では、「実は宗茂は気づいていたけど、家臣の期待を裏切らないためにあえて放置した」ということになっています。
私としては、本当に気にしていないという方が好みなんですけどね。
また、不仲といわれた誾千代(妻)との関係性は、童門作品よりさらに美しく描かれており、大河ドラマにするとしたら、誾千代との関係性については葉室作品を原作にして欲しいですね。
何度も言うけど、早く大河ドラマになって欲しいなあ。
童門冬二著「小説 立花宗茂」読了。
引き続きGW中の読書録。
今や世の中の歴史ファンの中で「大河ドラマの主人公にしたい戦国武将No1」の座にあると言っても過言でない立花宗茂。
特にここ十年くらいの人気の急激な高まりを感じます(少なくとも15年前は「信長の野望」プレイヤーしか知らなかったと思う笑)。
NHKもついに「英雄たちの選択」で取り上げましたしね(大河化への布石か?)。
正面から取り上げられた小説は意外と少ないのですが、この作品はその中の一冊です。
500ページを超える長編ですが、ライトノベルのような軽快な筆致で、サラサラっと通読できます。
あらためて読んでみても、これほど大河ドラマ向きの武将なんて他にいないんじゃないですかね。
大河ドラマのために創作された架空の人物なんじゃないかっていうほど、大河ドラマに必要な全ての要素を兼ね備えています。
人物像がとても魅力的。
誾千代(ぎんちよ)という「尖った」奥さんもいる。
波瀾万丈の人生。
適度に美化されてもいるし、もうこれが大河の原作でいいんじゃない?(笑)
実は2020年の大河化が有力視されていたようなのですが、ふたを開けてみたら明智光秀。しかし、今年の大河は災難続きですから、・・・(自粛)。
さあ、この記事を読んだそこのあなた、みんなで立花宗茂の大河ドラマ化を応援しましょう!(笑)